マシンピラティスで気持ち悪い…は異常じゃない!専門家が教える原因とやさしい対策

マシン ピラティス 気持ち 悪い

楽しみにしていたマシンピラティスで、まさかの吐き気…。がっかりして、「私には向いてないのかも」と不安になっていませんか?

結論から言います。その症状は異常ではありません。 あなたの体が弱いからでも、ピラティスが合わないからでもなく、多くの初心者が経験する、体の正常な反応です。

はじめまして。理学療法士でピラティス指導者の鈴木彩香です。これまで多くの初心者の方を見てきましたが、同じような経験をされる方は決して珍しくありません。

この記事では、体の専門家である私の視点から、なぜ気持ち悪くなるのかという科学的な原因と、二度と不安な気持ちにならないための具体的な対策を、どこよりもやさしく解説します。この記事を読み終える頃には、あなたの不安は「次も挑戦してみよう」という自信に変わっているはずです。


この記事を書いた人

鈴木 彩香(スズキ アヤカ) 理学療法士 / ピラティス・マスタートレーナー

医療機関でのリハビリ指導歴10年。運動生理学に基づき、500名以上のピラティスインストラクターを育成。特に初心者が安全に、そして楽しくピラティスを始められるような指導を得意とする。身体の専門知識を持つ、親身で頼れる「健康のパートナー」として、一人ひとりの不安に寄り添うことを信条としている。

この記事の監修者

佐藤 健司 医師 さとう内科・耳鼻咽喉科クリニック 院長

日本内科学会認定医、日本耳鼻咽喉科学会専門医。めまいや自律神経系の症状に関する診療経験が豊富。本記事における医学的記述の正確性を監修。

目次

あなただけじゃない。初心者の多くが感じる「マシン酔い」の正体

「レッスン中、だんだん気分が悪くなってきて…」「周りの人は平気そうなのに、私だけがおかしいのかな?」

レッスンを終えた初心者の方から、こういったご相談を本当によく受けます。期待に胸を膨らませて挑戦したのに、不快な思いをしてしまったら、がっかりするのも当然です。

でも、どうか自分を責めないでください。その症状は、車や船で酔ってしまう「乗り物酔い」にとてもよく似た現象で、私たちは「マシン酔い」と呼んでいます。

特に、普段あまり運動をしていない方や、乗り物酔いをしやすい体質の方が初めてマシンピラティスを体験した時に起こりやすいものです。決してあなたが弱いわけでも、珍しいわけでもないのです。まずは「そういうこともあるんだ」と知って、安心してくださいね。

なぜ?理学療法士が教える「気持ち悪さ」の3つの科学的メカニズム

では、なぜ体に良いはずのマシンピラティスで「マシン酔い」が起きてしまうのでしょうか。曖昧な「気合」や「慣れ」の問題ではなく、そこにはちゃんとした科学的な理由があります。主に3つのメカニズムが考えられます。

1. 脳の混乱:耳と体の「感覚のズレ」

これが最も大きな原因です。私たちの脳は、耳の奥にある平衡感覚(前庭覚)と、手足の筋肉や関節が感じる位置感覚(固有覚)という2つの情報を常に受け取って、体のバランスを保っています。

ところが、マシンピラティスで使うリフォーマーという器具は、寝たまま体がスーッと動く、日常では経験しない動きをします。このリフォーマーの動きが、あなたの前庭覚を刺激します。すると、脳は「耳は『動いている』と言っているのに、手足は『そんなに動いていない』と言っているぞ?」と混乱してしまいます。

この前庭覚と固有覚の感覚の不一致(コンフリクト)こそが、乗り物酔いと同じ吐き気を引き起こす正体です。

マシンピラティスで気持ち悪くなる原因の図解。耳の平衡感覚と手足の位置感覚の情報が脳で食い違い、乗り物酔いのような症状が起きることを示している。

2. 自律神経の乱れ:無意識の「呼吸の停止」

ピラティスは呼吸がとても大切ですが、初めての動きに集中するあまり、無意識に息を止めてしまう方が多くいます。呼吸が止まったり浅くなったりすると、体のオン・オフを切り替える自律神経が乱れやすくなります。自律神経のバランスが崩れると、血圧のコントロールがうまくいかなくなり、めまいや吐き気につながることがあります。

3. 低血糖:レッスンの「空腹」

体に力が入らない、冷や汗が出るような気持ち悪さの場合、空腹による低血糖の可能性もあります。仕事帰りに空腹のままレッスンを受けると、運動でエネルギーを消費し、血糖値が下がりすぎて不調を感じることがあります。

次からできる!レッスン前・中・後の具体的な5つの対策

原因がわかれば、対策は難しくありません。次にレッスンを受ける時に、ぜひ試してみてほしい具体的な方法をまとめました。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 「好転反応だから我慢しよう」は絶対にNGです。吐き気は、あなたの体が発する「少し休んで」という大切なサインです。

なぜなら、多くの人が「この不快感を乗り越えれば良くなるはず」と我慢してしまい、結果的にピラティス自体が嫌になってしまうからです。筋肉がプルプルするような心地よい疲労感と、吐き気やめまいのような不快な症状は、全くの別物。体のサインを正しく聞いてあげることが、長く楽しく続ける一番の秘訣です。

📊 比較表

表タイトル: マシン酔いを防ぐための対策チェックリスト

タイミング対策具体的なアクション
レッスン前① 軽く食べるレッスンの1〜2時間前に、おにぎりやバナナなど消化の良いものを少しだけ。
② 水分補給のどが渇く前に、こまめに水分を摂っておく。
レッスン中③ 視線を固定するなるべく遠くの一点を見つめるように意識すると、脳の混乱が収まりやすいです。
④ 呼吸を止めない「フ〜ッ」と長く息を吐くことだけ意識。吸うのは自然にできます。
レッスン後⑤ ゆっくり起き上がるレッスン終了後、急に頭を上げず、ゆっくりと時間をかけて起き上がる。

【一番大切】インストラクターへの「賢い伝え方」テンプレート

いろいろな対策をご紹介しましたが、実は一番効果的で、一番大切なことがあります。それは、勇気を出してインストラクターに伝えることです。

プロのインストラクターは、そういった生徒さんを何人も見てきています。あなたを責めたり、呆れたりすることは絶対にありません。むしろ、伝えてくれたことに感謝し、すぐに対応してくれます。

そうは言っても、何て言えばいいか分からない…という方のために、そのまま使える「伝え方テンプレート」をご用意しました。

レッスン前に伝える場合

「すみません、今日が2回目なのですが、前回少し乗り物酔いのような感じになってしまって。もし気分が悪くなったら、少し休ませていただくかもしれません。よろしくお願いします。」

事前にこう伝えておくだけで、インストラクターはあなたのことを見守り、声をかけやすくなります。あなた自身も「言っておいたから大丈夫」と、とても楽な気持ちでレッスンに臨めます。

レッスン中に気分が悪くなったら

「すみません、少し酔ったような感じがします。動きを止めてもいいですか?」

レッスンを中断するのは勇気がいるかもしれませんが、全く問題ありません。インストラクターはすぐに強度を下げたり、休憩を促したり、頭の位置を変えるなどのアドバイスをしてくれます。

よくある質問(FAQ)

Q. どのくらいで「マシン酔い」に慣れますか?

A. 個人差がありますが、多くの方は3〜5回程度で慣れてきます。脳がマシンの動きを学習し、感覚のズレが少なくなってくるからです。焦らず、ご自身のペースで続けてみてください。

Q. 乗り物酔いの薬は飲んでもいいですか?

A. どうしても不安な場合は、医師や薬剤師に相談の上で服用するのも一つの手です。ただし、根本的な解決にはならないため、まずはご紹介した対策を試してみて、体を慣らしていくことをお勧めします。

Q. 危険なめまいや吐き気との見分け方はありますか?

A. レッスン後、安静にしても症状が全く改善しない、ろれつが回らない、激しい頭痛を伴うといった場合は、ピラティスとは別の原因が考えられます。その際は、速やかに医療機関を受診してください。


まとめ:体のサインを理解すれば、ピラティスはもっと楽しくなる

改めてお伝えします。マシンピラティスで気持ち悪くなるのは、あなたのせいではありません。それは、あなたの体が新しい動きに適応しようとしている証拠であり、「辞めるサイン」ではなく、あなたの体と対話するための「最初のサイン」なのです。

原因が「脳の混乱」にあることを理解し、具体的な対策を知った今、以前よりも少し不安が和らいでいれば嬉しいです。

そして、一番の味方は、あなたのすぐそばにいるインストラクターです。

次のレッスンを予約する前に、この記事の「対策チェックリスト」「伝え方テンプレート」をお守り代わりにしてみてください。そして、勇気を出してインストラクターに相談してみてください。

あなたのピラティス体験が、不安なものから、楽しく、心地よいものに変わることを心から応援しています。

参考文献

  • Anchor (2023). ピラティスで気持ち悪くなるのはなぜ?【原因と対策】.
  • P-STUDIO U (2023). トレーニング中の吐き気の原因と対処法.
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