普通のシャツでOK!ビジネスで浮かない「大人のカフス」入門と選び方

カフス

「カフスに興味はあるけれど、自分にはまだ早い気がする」「キザに見えたり、マナー違反になったりするのが怖い」

もしあなたがそう感じて、あと一歩を踏み出せずにいるのなら、安心してください。実は、カフスを楽しむために特別な準備はほとんど必要ありません。「専用のシャツがないから」と諦める必要もありません。

あなたが今クローゼットに持っているそのシャツにも、カフスは付けられる可能性が高いのです。

この記事では、元テーラー店長として3,000人以上のスタイリングを見てきた私が、「普通のシャツでの楽しみ方」と、ビジネスシーンで信頼されるための「失敗しない選び方」を徹底解説します。袖元のわずか1cmの輝きが、あなたのビジネススタイルをどう変えるのか。一緒に見ていきましょう。


この記事を書いた人

坂本 雅也(サカモト マサヤ) メンズドレススタイル・アドバイザー / 元大手テーラー店長

延べ3,000人以上のビジネスマンのスーツスタイリングを担当。現在は企業向け「身だしなみ研修」の講師としても活動。「おしゃれの先生」ではなく、ビジネスの現場を知る「頼れる先輩」として、理論だけでなく「相手への印象」を最優先に考えたアドバイスを行う。

スタンス: 「大切なのは、主張することではなく、整えること。」


目次

「専用シャツが必要」は誤解!手持ちのシャツを確認しよう

「カフスをするには、袖が折り返されている『ダブルカフスシャツ』を買わなければならない」

これは、私が店頭で最もよく耳にする誤解の一つです。もちろん、ダブルカフスシャツはカフスボタンのための正式なシャツですが、カフスデビューにおいて必須ではありません。

まずは、あなたがお持ちのビジネスシャツの袖口(カフス部分)をよく見てみてください。

ボタンが付いている反対側に、ボタンを通すための穴(ボタンホール)が開いているのはご存知でしょう。では、ボタンが付いている側にも、もう一つ穴が開いていませんか?

もし、ボタンと並んで穴が開いているなら、そのシャツは「コンバーチブルカフス」と呼ばれる仕様です。

コンバーチブルカフスとは、その名の通り「兼用」ができる優れた仕様です。 普段通りボタンで留めることもできれば、ボタンを使わずに両側の穴を重ねて、カフスボタンを通すこともできるのです。

現在、日本で流通している既製シャツの多くが、このコンバーチブルカフスを採用しています。つまり、あなたはすでにカフスを楽しむ準備ができている可能性が高いのです。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 今すぐクローゼットにあるシャツの袖口を確認し、ボタンの隣に穴があるかチェックしてみてください。

なぜなら、多くの人が「専用シャツを買う手間」を理由にカフスを諦めてしまっているからです。手持ちシャツがコンバーチブルカフスだと分かれば、心理的なハードルは一気に下がります。まずは手持ちのシャツで試すことから始めましょう。

コンバーチブルカフスの見分け方

コンバーチブルカフスの構造図解。ボタンの横にボタンホールがある特徴を示し、カフスボタンが装着可能であることを説明している。

30代ビジネスマンが「痛い」と思われないカフスの選び方

手持ちのシャツでカフスが使えると分かったところで、次は「何を選ぶか」です。

ここで多くの人が陥る失敗があります。それは、「せっかくカフスをするのだから」と、張り切って大きな宝石が入ったものや、ブランドロゴが目立つものを選んでしまうことです。

はっきり申し上げます。ビジネスシーンにおいて、過度な装飾は「キザ」「チャラい」というネガティブな印象に直結します。

30代のビジネスマン、特にマネージャークラスの方に求められるのは、個性の主張ではなく「大人の配慮」と「信頼感」です。ビジネスで浮かないためには、「引き算の美学」で選ぶことが重要です。

以下の3つの原則を守れば、絶対に失敗することはありません。

1. 素材:シルバー系メタル一択

ゴールドや、色のついた石が入ったものは避けましょう。ビジネススーツや革靴の金具(バックルなど)と調和する「シルバー(銀色)」の金属素材が鉄則です。プラチナのような落ち着いた輝きは、誠実さを演出します。

2. 形状:シンプルなスクエアかラウンド

キャラクターものや、奇抜な形のカフスは、会話のネタにはなるかもしれませんが、ビジネスの信頼性を損なうリスクがあります。正方形(スクエア)や円形(ラウンド)、あるいは長方形のシンプルなデザインを選びましょう。表面にヘアライン加工(細かい筋目)や、控えめなカットが入っているものは、指紋が目立ちにくく上品です。

3. 固定具:使いやすい「スウィヴル式」

カフスの留め具にはいくつか種類がありますが、初心者に最もおすすめなのは「スウィヴル式(可動式)」です。T字型の留め具を倒して一直線にし、穴に通してから再びT字に戻して固定するタイプです。着脱が簡単で、落とす心配も少ないのが特徴です。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 最初の1組は、3,000円〜5,000円程度の「シンプルなシルバーのスクエア型」を購入してください。

なぜなら、このデザインはどんな色のスーツやネクタイにも合い、決して悪目立ちしないからです。私が過去にスタイリングしたお客様でも、結局一番長く愛用されているのは、このようなベーシックなデザインです。「物足りないかな?」と思うくらいが、ビジネスでは正解なのです。

ビジネス用カフスのOK/NG比較図

ビジネス用カフスの選び方比較。シンプルなシルバー製はOK、派手なゴールドや石入りはNGであることを示している。

写真で解説!普通のシャツへの「正しい付け方」

お気に入りのカフスを手に入れたら、いよいよ装着です。「普通のシャツ(コンバーチブルカフス)」に付ける場合、元々付いているボタンをどうすればいいのか迷う方が多いですが、手順は非常にシンプルです。

ここでは、最も一般的な「スウィヴル式カフス」を例に解説します。

手順1:袖口のボタンホール同士を合わせる

まず、シャツの袖口を合わせます。普段ボタンを留める時のように生地を重ねるのではなく、袖口の裏側同士を合わせるようにして、両端をつまみます。 こうすると、拝むような形(拝み合わせ)になり、両側のボタンホールが重なります。

※この時、元々付いているボタンは使いませんが、邪魔にならない位置に来るよう設計されているので、そのままで大丈夫です。

手順2:カフスの留め具を一直線にして通す

カフスの留め具(T字の部分)を倒して、棒状(一直線)にします。そして、重なった2つのボタンホールに、シャツの外側(手の甲側)から内側に向かって一気に通します。カフスのデザイン面が、外側に見えるようにするためです。

手順3:留め具を戻して固定する

袖の内側に出た留め具を、再び90度起こしてT字に戻します。これでカフスが抜けなくなり、固定完了です。

たったこれだけです。慣れれば片手で数秒でできるようになります。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: 朝の忙しい時間に慌てないよう、シャツを着る前に一度、カフスを通す練習をしてみてください。

なぜなら、コンバーチブルカフスのボタンホールは、普段ボタン用に使っていないため、最初は生地が硬くて通りにくいことがあるからです。一度通して穴を馴染ませておくと、本番でスムーズに装着できます。

コンバーチブルカフスへの装着手順(3ステップ)

カフスボタンの付け方3ステップ。袖口を合わせ、外側からカフスを通し、留め具を固定する手順を図解。

これだけは守りたい!シーン別TPOとマナー

カフスは、シーンによってふさわしい素材やデザインが決まっています。特に冠婚葬祭では、マナー違反が相手への失礼にあたるため注意が必要です。

ここでは、ビジネス、結婚式、パーティの3つのシーンにおける「正解」を整理しました。


📊 比較表
表タイトル: シーン別カフスの選び方・マナー早見表

シーンおすすめの素材・色デザインマナー・注意点
ビジネスシルバー(銀)
真鍮、ステンレスなど
シンプル
スクエア、ラウンド
「目立たないこと」が最優先。
ゴールドや派手な石入りは避ける。
結婚式(昼)白蝶貝(シロチョウガイ)
またはシルバー
フォーマル
白く輝くもの
「白」が基本。
黒い石や派手な色はNG。主賓への敬意を表す。
結婚式(夜)
パーティ
オニキス(黒)
黒蝶貝、タキシードスタッズ
エレガント
少し華やかでも可
夜は「黒」や「輝き」が許容される。
タキシード着用時はスタッズと合わせるのが正式。

特に間違いやすいのが結婚式です。「お祝いだから華やかに」とゴールドや色物を付けたくなるかもしれませんが、昼間の結婚式では「白(白蝶貝)」が最も格式高いマナーとされています。ビジネス用のシンプルなシルバーカフスでも代用可能ですが、一つ白蝶貝のカフスを持っておくと、いざという時に恥をかきません。

✍️ 専門家の経験からの一言アドバイス

【結論】: まずは「ビジネス用のシルバー」と、余裕があれば「フォーマル用の白蝶貝」の2つを揃えれば完璧です。

なぜなら、この2種類があれば、日本の一般的な社会生活におけるほぼ全てのシーン(仕事、結婚式、葬儀以外)をカバーできるからです。ちなみに、葬儀ではカフスは付けないのが基本マナーですので、外していきましょう。

よくある質問(FAQ)

最後に、店頭でお客様からよくいただく質問にお答えします。

Q. 安いカフスと高いカフス、何が違うのですか?

A. 主に「金具の耐久性」と「仕上げの美しさ」が違います。 数千円のものと数万円のブランド品を比べると、デザイン自体は似ていても、可動部分(スウィヴル)のバネの強さや壊れにくさ、金属の研磨の滑らかさに差が出ます。しかし、最初は3,000円〜5,000円程度のもので十分機能しますし、見た目も遜色ありません。まずは手頃なものから始めて、愛着が湧いてきたら良いものを検討してみてください。

Q. クールビズ(ノーネクタイ)でもカフスはありですか?

A. はい、むしろおすすめです。 ネクタイをしないクールビズスタイルは、どうしても首元が寂しくなり、カジュアルになりすぎてしまうことがあります。そんな時、袖元にカフスがあるだけで「きちんとしている感」や「おしゃれへの配慮」が伝わります。ノーネクタイの時こそ、カフスが上品なアクセントとして活躍します。


まとめ:カフスは「キザ」ではなく「大人の配慮」

最後までお読みいただき、ありがとうございます。

「カフスは専用のシャツが必要で、ハードルが高いもの」 「カフスはキザで、ビジネスには不向きなもの」

そんなイメージが、少し変わったのではないでしょうか。

カフスは、決して自分を誇示するための道具ではありません。相手に対して「身だしなみを整えてきました」という敬意を示し、あなた自身の背筋を少しだけ伸ばしてくれる、大人のためのアイテムです。

まずは今週末、3,000円程度のシンプルなシルバーカフスを探してみてください。そして、月曜日の朝、いつものシャツの袖に通してみてください。

鏡に映るあなたの姿は、きっと今までよりも少しだけ自信に満ちて見えるはずです。その小さな自信が、あなたのビジネスを良い方向へ進める一歩になることを願っています。

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